医療費の請求が少なくなる?交通事故でのケガも健康保険が使える!

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交通事故でケガをした場合、健康保険を利用できずに高額な治療費がかかるというイメージが一般的にあるようです。実際には労災が適用される場合を除いて健康保険を利用でき、治療費の負担を軽くすることができるので、最初の受診時に健康保険を使う旨を病院で宣言することが大切です。

ここでは、健康保険を利用するメリットや交通事故発生後の手続き方法について解説します。

交通事故の防止策・万が一事故に遭ったときのことを考えてできること

健康保険を使って自己負担額を軽減!高額療養費も適用されるので安心

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健康保険を使わずに治療を受ける場合(自由診療)、医療機関で決められた診療報酬の単価(1点20円~30円)で計算されます。日本医師会や損害保険料率算出機構・日本損害保険協会との間では、1点12円(検査等の技術料は1点14.4円)で計算する「自賠責保険診療費算定基準」を定めていますが、法的拘束力は伴いません。

そのため、自動車保険から治療費が支払われるまでの立替金や最終的な自己負担額が高額になりがちです。任意保険に加入している場合は、対人賠償保険や人身傷害補償から治療費が支払われますが、任意保険が適用されない場合の補償は自賠責保険の限度額(120万円)の範囲内です。

治療費が高額になった場合、自賠責保険の限度額の関係で慰謝料や休業補償等を受け取れないケースがある他、治療費の持ち出しが発生することも考えられます。一方、健康保険を使った場合は全国一律の診療報酬の単価(1点10円)で計算されるので、自由診療と比べると自己負担額が少なくて済みます。

入院時を中心に月の医療費が高額になった場合に、一定額を超えた部分の医療費が払い戻される高額療養費制度も利用可能です。全国ほとんどの医療機関で健康保険証が利用できますし、仮に保健医療機関ではない病院・診療所で診療を受けた場合でも、一定の条件で保険診療の基準に相当する額が療養費として支給される制度も用意されています。

最初の受診時に健康保険を使う意思を表明!保険証発行元への電話連絡も忘れずに

一部の医療機関では、交通事故に関連する診療は自由診療扱いとするケースが見られるようです。

一方、厚生労働省の通達(平成23年8月9日 保保発0809第3号「犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて」)では、交通事故が原因の診療であっても健康保険が使えると明確化されています。

また、自由診療を希望しないことを理由に診察自体を拒否することは、医師法第19条の応召(診察申込みに応じる)義務に反すると考えられています。

そのため、交通事故によるケガで健康保険を使いたい場合は、最初の受診(初診)時に健康保険証を受付に提示するだけでなく「健康保険を使って治療したい」と医療機関の受付担当者に伝えることが大切です。

相手方の損害賠償誓約書を求められても、「第三者行為による傷病届」を後日提出する旨を説明すれば問題ありません。初診時に保険証を持っていない場合は当日分の医療費は全額支払うことになりますが、当月中に保険証を受付に提示することで保険適用分との差額を返金してもらえる医療機関がほとんどです。

医療機関から差額の返金を受けられない場合でも、保険者(保険証の発行主)に請求した上で、3~4か月後に返金を受けることができます。交通事故で健康保険を使用する際には電話連絡を必要とする保険者(保険証の発行主)が多いので、早めに連絡を入れるようにしましょう。

医療機関から発行される請求書も自賠責保険や任意保険の手続きに必要となるため、取っておく必要があります。

「第三者行為による傷病届」を保険者に提出しよう!高額療養費限度額適用認定証も同時申請可

初診後は、できるだけ早く「第三者行為による傷病届」を保険者に提出します。保険会社による傷病届の作成サポートサービスを利用すると、相手方が記載する念書の作成も依頼できて安心です。届出の際は交通事故証明書の添付が必須ですから、相手方が警察への通報(事故報告)を拒んだとしても必ずその場で通報し、事故現場の検証を受けるようにします。

警察官による検証がなければ、事故証明書は発行されません。入院・手術等で高額な医療費が見込まれる場合は、高額療養費限度額適用認定証(限度額認定証)を申請することも可能です。限度額認定証を医療機関の窓口で提示することで、支払いを自己負担限度額までに抑えることができ、高額な医療費立替えを避けられます。

第三者行為による傷病届や限度額認定証の申請書類は保険者の公式サイトからダウンロードできますが、郵送で入手することも可能です。

医療費は一旦立替えが必要!自賠責保険から仮払いを受けられる場合がある

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「第三者行為による傷病届」の提出後も、診察ごとに医療費(一部負担金)の支払いは必要です。医療機関によっては、保険会社に医療費を直接請求して、被害者(受診者)がその場で自己負担しないよう配慮してもらえるケースもあるようです。

医療費の支払いが難しい場合は自賠責保険の仮渡金制度を利用して、次に示す金額の仮払いを被害者1名単位で受けることができます。・入院・通院を問わず11日以上の加療が必要な傷害の場合は5万円・14日以上の入院が必要な場合や上腕、又は前腕の骨折時は20万円

・14日以上入院かつ30日以上の加療が必要な場合や大腿骨、又は下腿骨の骨折時は40万円

過失割合が未確定な状態でも仮渡金の請求はできますが、請求は1回限りであること、損害賠償額が確定後に過払金が生じた場合は返還が必要となる点に留意が必要です。

損害賠償額の確定後は、保険会社と保険者とがやり取りを行い、過失割合に応じて医療費の精算が行われます。

医療費の額が保険金の支払限度額に収まる限り、受診者への追徴は行われません。また、加害者がいない事故(自損事故)の場合でも自費診療に切り替わることはなく、通常の保険診療として扱われます。

健康保険を利用できない2つのケース!違法行為が原因の場合はどこからも補償を受けられない

交通事故の場合でも、次の2つのケースでは健康保険での診療を受けられないので注意が必要です。1つ目は、仕事中や通勤途中での交通事故のケースです。仕事に起因するケガの場合は健康保険に代わり、労災保険から治療費の支給を受けられます。

労災保険を使う場合は基本的に自己負担額が発生せず、症状固定の判断は保険会社ではなく医師が行うため、安心して通院を続けられる点がメリットと言えます。なお、慰謝料や物損に伴う損害賠償金については自動車保険への請求が可能です。

2つ目は、飲酒運転や無免許運転による交通事故のケースです。運転者本人が積極的に違法行為を行ったと一般的に認識されるため、健康保険法第116条に基づき100%の給付制限の対象となります。保険の約款にも「保険契約者又は被保険者の悪意による損害は免責」と明記されています。

事故の被害者は健康保険を使用できますが、治療にかかった費用は全額加害者側に請求されます。損害賠償の額は大きくなりがちで、自己破産を申し立てたとしても免責対象外ですので、自分の人生を守るためにも飲酒運転や無免許運転は絶対にしないようにしましょう。